NTSC(アナログTVの規格)

2017.01.23
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 今のプラズマTV購入前、私用で東京行ったついでに、時間つぶしに近郊の駅前量販店で絵を他と見比べる(近所に大型店無いので多品種見比べるの困難。パイオニアTVなんて三宮で初めて実物見た記憶)。 ボーといろいろなTVを眺めていると、近くで店員さんが初老の夫婦に安めの海外製品勧めてた。 余計なこととは思いながら、そのフロア一帯で繰り返し再生されているデモ映像で、このもう少し先で、竹籠がゆっくり動きだすときの、籠に注目して見比べてほしいと助言。 安いものは、動画部分と静止画処理部分の切り替えがうまくいかず、一瞬違和感ある画像になる点を指摘。 価格とこの絵の処理でどっちがいいか考えてほしいと、余計なことを言って退場。 さて、商談はどっちに決まっただろうねぇ。 嫌な人だった?>店員さん

 日本のNTSCというアナログTV(米国規格だったりしますが)は、飛び越し走査しています。 簡単にいうと、人の目の動体視力特性が、毎秒50枚くらい絵を書き換えないと、ちかちかして見える。 しかし、NTSCは、毎秒30枚送る帯域しか使わないというエコ規格。 目をごまかすために、画面を走査線1ほんづつ交互にまびいて、半分づつ絵を書き換える(分割したそれぞれの絵をフィールドという名前で呼ぶ)。 絵は毎秒60枚書き換えることになるので、ちかちかしない。別の言い方をすると、縦方向約500本の分解能がある画面(ブラウン管)に対して、約250本分解能の絵を、見かけ高速(60Hz)に画像を送るという手法です(細かく言うと走査線の幅ずれている2つの絵)。 しかし、本来異なる絵から間引いたもの(フレーム)がブラウン管上で混じることになるので、輪郭強調や色補正をするのに、違う絵を使うのではなかなかうまくいかないという問題が生じてしまいます。走査線1本単位で画像処理するのではなく、1画面として処理するのがトレンド(2次元フーリエ解析しってる? ものの境界線を探すとかいろいろ)。 この辺が動画・静止画を区別して処理するといういわばいかがわしい(?)画像処理の根源(と勝手に予想)。 つまり静止画であれば(1/60秒ずれた後の時間も同じ絵なら)500本分解能がありますが、60Hz単位で動いている動画としては約250本の解像度しかないという問題です。1画面すべて静止画とかすべて動画とかありえない(たとえば野球中継でボールや投手は動画ですが、構えている野手も、スタジアムの壁とか、芝生はカメラが動かない限り静止画処理ができます)。 だから画面を静止画処理動画処理する部分に分けて処理したいんだけど、カメラが動いた瞬間、静止画処理だった芝生を動画処理しなくてはいけなくなるので、分解能が下がってしまうという問題が出るわけです。この部分はメーカのノウハウの塊でTVの性能みるキーワードだったりしたと思います。 上の初老ご夫妻への竹籠の動く部分見て頂戴というアドバイスは、これを解りやすく示したものです。一般の人は見る事ありませんが、開発研究室ではこの静止画処理・動画処理という境界をリアルタイムで見ながら評価していたのを、見たことがあります(評価・設計のために、このような情報を見る機能がきっとついているのかな?)。 TVのディジタル処理ICを開発する人の目標はアナログTV技術の優秀なメーカのテレビに追いつくことだったりしました(V社という噂?ここまで追いついたという感想を陰で聴いた記憶)。

ちなみにNTSCはそもそも白黒放送だったのを賢い拡張で白黒兼用カラー対応したもの(白黒TVでカラー放送みても破綻しない)。帰線期間というブラウン管上で横方向に走査線を一本引いた後、電子銃の方向をまた左端に戻るという実際には線を書かない時間帯に、カラーバーストという基準信号を乗せて、実画像は、平均すれば(=ローパスフィルタで低い周波数成分を抜き出す)白黒の明度となる強弱信号に、先のカラーバーストという正弦波の振幅位相を基準として、位相変調した色信号を高調波信号として重畳したものになります。 VTRでコピープロテクトかかった市販のテープってあったでしょう? アナログオシロスコープを秋葉で中古で購入したとき、カラーバーストを見て理解しました(パーフェクトTV:いまのスカパーの前身の映像だったかな?プロテクトのかかったテープ持ってた記憶ないから)。 噂通りの状況をデジカメで波形とって前作っていたホームページの中で紹介理論説明しようかとも思ったけど、こんなんはっきりばらすと怖い気がするので、放置しました。 位相検波するのに、色の振幅基準を何に置くか?というのが、カラーバースト基準という教科書通りの原理の悪用だったりします。噂ではこの原理を時間軸で長時間安定させる優秀な装置は、コピープロテクトが効かない(きれいに絵が出てしまう)ので横やりが入ったとかいう話を聴いた気がします。 やれやれという当時の感想。

自宅白黒TVで、テレビをみて、画面隅にカラー放送のマークがでるのがうらやましかった少年時代。 え?ジャングル大帝進めレオって、カラー放送だったん!!新聞の番組表にもカラーって表記があったっ気かするなぁ(古すぎる?さて私何歳の人でしょうネ)

唐突ですが、オシロスコープには、一般に使われるエッジトリガとかライントリガではなく、NTSCの、走査線に相当する水平同期のモードや画面1画面に相当する垂直同期モードというのがあって、上記のカラーバーストとか簡単に見る事ができます。ちなみにTVの同期信号は、商用電源等の整数倍に合わせて決めたという話があるとかないとか(特定ではなくいろんな周波数の倍数にしやすい数字だったらしい)。 それはそうと、すでにアナログ放送中止した後の数年前に買ったテクトロニクスのオシロスコープ:TBS1104って、いまだに、NTSCの同期モードがあるのでちょっと驚く(まあ製品企画の時点でまだ需要あったんでしょう)。

関連する話として、静止画を作るのに、飛び越し走査する場合、30Hzの半画面分(奇数フレーム)記録して、後半(偶数フレーム)同じデータを出力する(水平方向で半画面分のオフセットが必要だけど)と、それはそれできれいに止まる静止画を作ることができます。縦方向の解像度が半分になるという欠点はあるけど、異なる絵が混じるよりはるかにましな静止画といえます。 これを拡張すると、TVの表示も1フィールド分の画像をずらしてフレームデータにつくりかえて、合成したフレームで60Hz単位で書き換えるという事ができます。すると画面の更新が早いので見た目滑らかな感じ。ノンインターとかブログレッシブとか、アナログ放送末期のデジタルTV(もちろん地デジ見据えた機種)では当たり前に実現できていたようです。 一般の人にはなじみ無い言葉でしょうが、クリアビジョンというのが初期の代表かな? 今のプラズマTVに買い換え前に見ていたクリアビジョンは、インチ1万円を大きく超える化け物です(1.5万円/インチかな?さすがに社製品を月賦購入したんだったかな? 購入したプラズマTVでちょうど1インチ1万円。いまはびっくりするくらい液晶TV安いねぇ。家電メーカやっていけないのが良く解る)。 クリアビジョンはそれできれいかというとちと残念な感想を持つこともしばし。あまりゴーストとかでる自宅ロケーションじゃないので、びっくりする効果感じられなかったから、高いと思うのかもね。
(たぶんドーハの悲劇のとき、)深夜TVみていて、芝生の動画静止画の挙動がやけに目にこびりついた記憶があります。

上で、フレーム間に画面半分のオフセット必要と書きましたが、理由があります。 ここまで、垂直分解能500本程度というアバウトな話をしていますが、本来は、525本の奇数ですから、2で割り切れません。結果フレームは、262.5本の分解能になります。 すなわち奇数フレームの最後は、もちろん画面最下位の走査線ですが、これは、画面の真ん中で途切れます。 そして、真上の画面最上位で次の偶数フレームの先頭データが入ることになります。よく考えてあるねぇ。なお信号は上記の本数で作りますが、CRT上実際に表示されるのは400本くらいだとか、300数十本が実力という話も聞いたように思います。

ところで、白黒でも見る事ができるという話をしていますが、逆にカラーTVとしてみると、よっぽど後から重畳したカラー信号を適切に取り除かないと、明るさがこの高周波でふらふら揺れる障害(縞模様が見えるともいう)が発生します。取り除く手段として、隣接走査線との相関をとるという手法があります。 規格上、実は、隣り合う走査線のカラー情報は逆位相。つまり足し算すれば、カラー情報は軽減さえという話。もっとも前提は同じ絵が出ているならという話ですが、静止画の走査線感覚という極近い距離なら、それはそれで、有効です。 逆に動画だと、ちょっと、輪郭がぶれたりしますが、動画だし、そんなにはっきり目に見えるものではないでしょう。 つまり、走査線1本分遅れた(進んだでも可)信号と単純足し算するわけですね。(画像輝度成分としては、2で割ることになりますけど)。 コムフィルタと呼ばれる回路構成で、和名はくし形フィルタ。 周波数特性がくしのように見えることに由来します。これはデジタルフィルタ。 TV初期に1ラインディレイ回路が時間精度それほどよくできるわけもなく、SAW(弾性表面波)フィルタというのが、あったりします。こっちは、周波数特性もそうなんですが、物理的に、対抗するくしみたいなものを、2つ並べるという見た目も、くし形フィルタだったりもします。 実は、修士論文のテーマが、誘電体薄膜上に、SAWフィルタを形成して、信号の伝搬を行う応用例を取り上げたものでした。 この応用の部分に関しては、伝搬したというところまでで、周波数特性うんぬんまではたどり着けなくて残念でしたが。

もっとも、最近はもっとすすんで、走査線一本ごとの相姦ではなく、画像2画面間の相姦を利用する3次元YC分離というのが、あたりまえになっています。VTRとかでもこの名前を売り物にした商品がいっぱいあったように思いました。 ライン間の相関という意味で、DATというヘリカルスキャンシステム(テープに対して、ヘリカルヘッドが、斜めに横切って、遅いテープ速度であっても、十分早いヘッドとテープの相対速度を得るものです。VTRでおなじみの技術ですが、DATでは、ATF(オートトラックファインディング)という技術で、正確に、テープとヘッドの確度を調整する技術が実現できています。機会があったら説明しましょうね。 高速サーチといって、1倍速以外に、できるだけデータを救うという点でもすぐれています。

地デジ始まったから、NTSCなんて古い話何かいても大丈夫と思ったけど、よく考えると全世界規模で見ると、まだ生きてる規格だよねぇ。コピープロテクトの話なんて、暗に示しているだけなので、雑誌見ても判るレベルだと思うけど、まずかった? そういう意味で、オシロスコープのNTSC同期モードって入るの普通かもね。

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